2016年9月9日金曜日

照沼重輝の中国彷徨記(上海蟹)・・・13

2016.9.9金 曇天 午前7:07
 縁起の良い時間に記すことになった。ハッピータイムである。
中国滞在中に陽橙湖のある昆山市に仕事で行くことになった。上海蟹を
食べる良いチャンスである。俺たちは仕事を早く切り上げ、陽橙湖の蟹
揚げ漁港に向かった。湖特有のくすんだ船が多数終結していた。丁度
水揚げの時であったので、取れた蟹を見ることができた。もぞもぞと
蠢ている蟹が船倉にいた。上海蟹の色は全体が泥色で腹の一部が
黄色じみた白色である。両手のハサミに多量の毛が生え、力強く閉じた
り開いたりしている。蟹の腹の蓋みたいなものが丸いのがメスで三角形
で尖っているものがオスである。漁民がヤニで真っ黒くなった歯を出して
買人と値段の交渉をしている。買人を観察するとやり手の都会人のよう
である。値段交渉が終わり、漁民と買人が握手をして別れていった。
その漁民は俺に蟹を買っていけと言っている。町の一流料亭で食べたら
眼をむくような料金を取られる上海蟹である。上海人は上海蟹を食べ始ま
ると言葉が無くなり、沈黙の食事風景になる。俺はその場面が滑稽で
面白く見える。日本でいえば上海蟹は河に生息する毛蟹である。日本人
はあまり食べない。俺も子供の頃、河で取ったことがあるが、食べたことは
無かった。しかし、中国では上海蟹と言えば高級中の高級である。毎年
秋風が吹くころになると、上海市内では上海蟹の水揚げ具合を心配し始め
る。身の付き具合や成長等の有無を風の便りで情報入手をする。そして、
いつ頃に買って家庭内で食できるかをそれぞれ判断するのである。
俺は今頃になると、そんな秋の上海風情を肌で感じたくなってしまう。
            アメリカ・中国大陸馬賊隊・・・照沼重輝

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